◇海洋散骨は法律的に大丈夫なの?守るべきルールやマナーとは
「少子高齢化で、お墓を管理する人がいない」
「故人が自然に還りたいという強い思いをもっている」
そういった理由から、海洋散骨をしたいと思う方が増えています。
しかし遺骨はお墓に埋葬するのが一般的なため「散骨は法律的に大丈夫なの?」と不安になる方も多いでしょう。
散骨は法律上、規制されてはいませんが、守るべきルールやマナーがあります。
この記事では海洋散骨に関する法律や条例、マナーについてまとめています。
海洋散骨を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
海洋散骨とは、海に遺骨を撒いて供養する方法です。
遺骨はお墓へ埋葬するのが一般的ですが、近年は海洋散骨を選択する方が増えています。
お墓を守ってきた人たちが高齢となり、管理が難しくなってきたためです。
また核家族化や少子化が進み、お墓を継承する人が少なくなってきていることも影響しています。
海洋散骨であれば、お墓を管理する必要がありません。
海に向かって手を合わせれば、いつでも故人を偲ぶことができます。
また故人が「自然に還りたい」といった強い思いがある場合、故人の希望を叶えることもできます。
こういった様々な理由から、海洋散骨を希望する方が増えているのです。
お墓の管理に困っている方は、海洋散骨に興味を持っていることでしょう。
しかし遺骨はお墓に埋葬するのが一般的なため、散骨が法律違反にあたらないのか気になる方も多いのではないでしょうか。
実は日本には、散骨に関する法律がありません。
そのため海洋散骨は、合法でも違法でもありません。
しかし海洋散骨をするにあたって、気にしておくべき法律があります。
ここでは、2つの法律をご紹介します。
埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
引用元:墓地、埋葬等に関する法律第4条
この法律は「遺骨を墓地以外に埋葬してはいけない」というものです。
海洋散骨は遺骨を墓地以外の場所に撒くため、「違法ではないの?」と疑問に思われるでしょう。
散骨は1990年代から、行われるようになりました。
この法律は1940年に制定されているため、散骨については想定されておらず、土葬を対象としたものとなっています。
そのため国は「墓地、埋葬等に関する法律は、伝統的な葬法である埋葬・火葬の取締法規であり、葬法の在り方自体を直接的に規制するものではない」という見解を示しています。
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。
引用元:刑法第百九十条
この法律は「死体や遺骨を棄ててはいけない」というものです。
海洋散骨は捉えようによっては、遺骨を海に棄てる行為で「違法ではないの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
海洋散骨については、実際に「遺体遺棄にあたるのではないか?」といった意見がでたこともありました。
しかし1991年に法務省は「節度をもって葬送の一つとして行われる限り、散骨は違法ではない」という見解を出しています。
非公式のコメントではありますが、1991年以降は「海洋散骨は遺体遺棄罪にはあたらない」という解釈が一般的となっています。
海洋散骨が法律上、違法でないことは前述の通りです。
しかし自治体によっては、海洋散骨を禁止していたり一定のルールを設けていたりするところがあります。
ここでは、自治体の条例を2つご紹介します。
散骨を行う際は、事前に自治体の条例を確認して必ず従いましょう。
第11条 何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない
引用元:長沼町さわやか環境づくり条例
北海道の長沼町では、墓地以外での散骨が禁止されています。
長沼町内で樹木葬を執り行う公園建設を計画した際、住民による反対運動が起きたことがきっかけで、平成17年に制定され、日本で初めての規制条例となりました。
墓地以外で散骨した場合は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金が課せられます。
(1)熱海市内の土地(初島含む。)から10キロメートル以上離れた海域で行う
こと。
(2)海水浴やマリンレジャーのお客様の多い夏期における海洋散骨は控えるこ
と。
(3)焼骨をパウダー状にし、飛散させないため水溶性の袋へ入れて海面へ投下
すること。
(4)環境保全のため自然に還らないもの(金属、ビニール、プラスチック、ガ
ラスその他の人工物)を撒かないこと。
(5)事業を宣伝・広報する際に「熱海沖」、「初島沖」など「熱海」を連想する
文言を使用しないこと。
(6)その他 1.はじめに(基本的な考え方)及び 2.目的を踏まえて、十分な配
慮を行うこと。
熱海市は有名な観光地です。
無秩序に散骨が行われると、熱海市のブランドイメージを損なう恐れがあることから、平成27年にガイドラインを制定しました。
散骨をする際は、上記の6つの事項を守らなければいけません。
海洋散骨に関する法律はありません。
そのため海洋散骨を取り扱う部署もないことから、許可や申請は不要となります。
通常はお墓に預けた遺骨を別のお墓に移動する際は、改葬許可証を役所に発行してもらう必要があります。
しかし散骨の場合は「移転先がない」という扱いになるため、改葬許可証も不要です。
ただし墓地管理者が「遺骨の引き渡しの際は、改葬許可証を提出してほしい」と依頼されるケースもあります。
そういった場合は自治体に相談して、改葬許可証を発行してもらえるかを確認しましょう。
自治体に条例がなくても、どこでも無暗に散骨をしていいわけではありません。
周りの人たちに迷惑をかけないように、節度をもって散骨することが大切です。
ここでは海洋散骨を行う上で、守るべきマナーについてお伝えします。
海洋散骨は、遺骨をそのまま散布することはできません。
遺骨をそのまま海に撒いてしまうと、もし海岸にたどり着いて人目に付いた場合、事件化してしまう恐れがあるためです。
事件化しないためにも、遺骨は2mm以下のパウダー状に粉骨してから、海に撒かなければいけません。
粉骨作業は自身でも行えますが、精神的にも肉体的にも辛い作業となります。
遺族の骨を砕くのは精神的にも苦痛ですし、思った以上に力のいる作業です。
そのため粉骨作業は、業者に依頼することをおすすめします。
散骨を請け負っている業者は、オプションで粉骨を依頼できるところが多いです。
機械での作業に抵抗がある場合は、手作業で請け負ってくれる業者もあるので、検討してみましょう。
海に散布するのであれば、橋やフェリー上から散骨しようと考える方がいるかもしれません。
しかし他の人の迷惑になるので、絶対に止めておきましょう。
舞い上がった遺骨が、他人に触れてしまう可能性があります。
さらに撒く場所に養殖場があった場合、衛生的に問題が発生して訴えられる恐れもあります。
散骨をする際には専用の船を借りて、人に迷惑がかからない外洋で散骨しましょう。
火葬する際、棺に故人にゆかりのあった物を入れる方は多いでしょう。
散骨する時も故人が好きだったものを、一緒に海へ流してあげたいと思うかもしれません。
しかし海洋散骨では環境衛生上、自然へ還ることができないものを撒くことはできません。
貴金属やプラスチックなどは、海へ撒かないようにしましょう。
故人を偲ぶため、何かを一緒に撒きたいのであれば、お花がおすすめです。
ただし茎や葉は取っておき、花びらだけを撒きましょう。
セロハン、リボンといった水に溶けないものは、事前に外しておきましょう。
海であれば、どこでも散骨して良いわけではありません。
海岸や浜辺など、陸から近い場所での散骨は止めておきましょう。
海水浴場や海の家など、観光地の場合は風評被害が広がってしまう恐れがあります。
また漁業関係者の迷惑になる可能性も高いでしょう。
また水があるからといって、湖や河川に散骨するのもマナー違反です。
湖や河川は水道水の源なので、問題が発生する恐れがあります。
散骨をする際は、人に迷惑のかからない場所へ散骨しましょう。
法要は喪服で行くのがマナーなので、海洋散骨の際も喪服で行こうと考える方がいます。
しかし船は揺れるため、滑って転倒する恐れがあります。
そのため喪服ではなく、動きやすい服装とシューズで行きましょう。
また散骨のために船を手配しても、乗り場は一般の船を利用するお客様と同じです。
観光で来ている方は、楽しい気持ちでいるでしょう。
そのような場所で喪服を着ていると、雰囲気を壊してしまうことがあります。
周囲の環境にも配慮して、散骨をする当日は動きやすい平服でのぞみましょう。
海洋散骨を行うには、法律上のルールはないものの、条例やマナーなどがたくさんあります。
また粉骨作業や船をチャーターすることは、なかなか手間のかかる作業です。
そのため海洋散骨は、専門の業者に依頼することをおすすめします。
専門の業者であれば、事前に申し込んで遺骨を手渡すだけでOKです。
粉骨作業から船のチャーター、散骨までしっかりと執り行ってくれます。
きちんと執り行ってくれるか不安な方は、粉骨作業を実際に見たり、一緒に乗船して散骨したりできるプランもあります。
海洋散骨を初めて行う場合、どのような業者に頼めばよいか迷う方も多いでしょう。
悔いのない散骨を行うためにも、業者はしっかりと選びましょう。
ここでは、業者を選ぶポイントをお伝えします。
海洋散骨のプランは、主に3つあります。
個人型プランは一番費用が高く、代行プランが最も費用が安いです。
散骨方法や予算をよく考えて、希望のプランを選べる業者にしましょう。
また業者によって、散骨できる海域が違います。
もし特定の海域で散骨したい場合は、事前に可能か確認しておきましょう。
あまりにも費用が安い業者は、注意が必要です。
最低限の料金しか記載しておらず、オプションで追加費用を請求される恐れがあります。
どういった内容で、どれくらいの費用がかかるのか、分かりやすい業者を選びましょう。
トラブルにならないためにも、事前に見積書と見積明細書をもらっておくことをおすすめします。
もし余裕があれば、複数の業者から見積をもらい、比較してから決めましょう。
Googleストリートビューで住所を検索して、実店舗が確認できれば安心です。
多くの場合、遺骨を郵送して業者に引き渡します。
そのため実店舗があれば、きちんと作業をしてくれるかが分かります。
もし検索結果が普通の民家だったり廃墟だったりする場合は、注意が必要です。
作業がどこか分からない別の場所で行われている可能性が高いです。
きちんと散骨してもらいたいのであれば、実店舗が確認できる業者にしましょう。
粉骨作業は、遺骨を取り扱う大切な作業です。
そのためきちんと粉骨作業を確認させてくれる業者を選ぶと良いでしょう。
粉骨作業に立ち会わせてくれるということは、きちんとした場所で作業の流れを見せられるということです。
立ち会い不可の場合は、どこでどのように粉骨されているかが分からず、不安に感じてしまうでしょう。
もし実際に立ち会えない場合でも、立ち会いを許可してくれる業者に依頼したほうが安心できるでしょう。
多くの方は、海洋散骨をするのが初めてで分からないことがたくさんあるでしょう。
そのため親身に相談に乗ってくれたり、話がしやすかったりする業者を選ぶのがおすすめです。
代行散骨であれば、業者の方と直接会える機会がないかもしれません。
そういった場合でも、電話で細かくやり取りをしてくれるかを確認しましょう。
「遺族の遺骨をきちんと任せられる」と思う業者に依頼することで、後悔のない散骨を行えます。
海洋散骨は法律的に問題ないとされていますが、マナーを守る必要があります。
マナーを守らずに散骨すると、周りの人に迷惑がかかったり、環境汚染へ繋がったりする恐れがあります。
マナーを守らずに行ってしまうと、いずれ散骨が禁止されてしまうことも想定できます。
故人を気持ちよく送り出すためにも、海洋散骨を行う際はマナーを守り、周囲に配慮しながら行いましょう。