◇宗教と海洋散骨について
葬送の方法と宗教は切っても切り離せない問題です。
そこで気になるのが、海洋散骨をする上で宗教はどうなるのかということではないでしょうか。
故人をお見送りするときには、やはりお坊さんに御経をあげて欲しいと思う方もいらっしゃいますし、宗教にこだわらずに静かに送り出したいという方もいるでしょう。
海洋散骨をするときに宗教の問題をどう考えれば良いのかについてご紹介いたします。
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故人が信仰していた宗教がある場合、その方法で送り出さないと供養にならないのではないかと不安になる遺族の方もいると思います。
また、海洋散骨にしたら成仏できないのでは?と心配される方もいますが、そんなことは全くありません。葬送に関しては、こうでなければならないという決まりのあるのものではなく、関わる方々の気持ちが一番大切です。
宗教とは関係なく、好きなようにセレモニーを行えるのが海洋散骨の特徴でもあります。
もちろん、お坊さんや牧師さんなどを呼んだりして、船上で通常のお葬式のような形でお見送りすることも可能ですし、しきたりや宗教の形にとらわれないからこそ、自由にできるのが海洋散骨なのです。
最近では宗教や宗派にとらわれずに、見送って欲しいと考える人も増えており、海洋散骨はそのような時代のニーズに応える供養の方法ともえるでしょう。
ただ、宗教色がないからこそのメリットもあれば、デメリットもあります。関わる方がどう感じるかの問題ですので、どちらがいい、悪いということではありません。
お坊さんや神父さんは自分で探すとして、様々な宗教のスタイルに対応したセレモニーを行ってくれる業者もいます。
通常の仏式のお葬式のような形でお焼香をしたり、御経を上げてもらった上で散骨したいと希望される方もいます。
海洋散骨=無宗教というわけではなく、宗教や宗派が自由、と考えていただくと良いでしょう。
埋葬の代わりに海に遺骨を撒きたい、だけど宗教による供養はきちんと行いたいという方は、そのような業者を探すと良いでしょう。
宗教の形にこだわらないメリットとしては、やはり故人の意思を大事にできるという点が一番大きいのではないでしょうか。
例えば釣りが趣味だった方は、好きだった海で見送って欲しいと思う方もいます。
思い出の品とともにお見送りすることができれば、故人もとても満足なのではないでしょうか。
また、お見送りする側も宗教は宗派にかかわらず、自分が思うような形で参列することができます。
写真を見ながら故人の思い出にゆっくり浸ったり、音楽をかけて賑やかに送り出すことも可能です。
最近では核家族化が進み、お墓の管理を引き継ぐ人がいないため、自分が亡くなってもお墓には入らないと決めている方も多いですね。
そのような場合は無宗教形式での海洋散骨を行うことによって、遺骨の埋葬問題などもクリアできます。
無宗教で埋葬してくれる墓地もありますが、結果的に誰が管理するのかという問題は残ってしまいます。
その点、海洋散骨という宗教の形に縛られない方式で遺骨を撒くことにより、納骨の心配がなくなるのです。
宗教や宗派が自由なことのデメリットとしては、親族の中には反対される方もいるかもしれないということです。
古くからの家族の伝統やしきたりを大切に思う方もいらっしゃいますので、たとえ故人の希望があったとしても、親族のお気持ちを無視して一方的に海洋散骨を行うわけにもいきません。
また、全てを散骨にしてしまうと後々お参りする場所がなくなってしまうため、一部をお墓に納骨したいと思ったとしましょう。
菩提寺での葬儀を行っていない場合に、葬儀だけ海洋散骨にして埋葬だけを菩提寺に、とするのは難しい問題です。
お葬式も行なっていないのに墓地に入れてくださいと言っても断られてしまうことが多いため、例えば仏式のお葬式を執り行い、それとはまた別に海洋散骨を行うとなると費用もかさんでしまいます。
お墓に入っていないと三回忌、七回忌などの定期的な法要もないため、気持ちの区切りがつけにくいと感じる方もいます。
お墓があれば、何かとお参りする機会もあり、お墓に手を合わせて故人を偲ぶということも可能です。しかし海洋散骨をしてしまうと遺骨を撒いた場所までいかないと手を合わせづらいというデメリットもあるのです。
その場合は一部を分骨して手元供養するなどの方法にすれば、心の拠り所を失わずに済むでしょう。
では、船の上で仏式のお葬式をあげてもらえば、海洋散骨の願いも叶えられて、お墓に納骨もできるのでは?と思いますが、菩提寺の住職がそれに応じてくれるかどうかはわかりません。
そうなると菩提寺の僧侶ではなく、宗派にはこだわらずに対応してくれるお坊さんやお墓を探すということになるかもしれません。
お寺によって考え方は違いますので、早めに確認をしておいたほうがよさそうです。
海洋散骨を宗教や宗派が自由な形で行う場合、何より大切なのが事前の話し合いです。
故人の希望をできるだけ叶えてあげたいですが、お見送りする側の気持ちもとても大切なものです。遺族みんなが納得できる形で送り出さないと、あとあと禍根を残すことになります。
お墓を管理する人が減っているとはいえ、まだ先祖代々の菩提寺、お墓が残っている方が多いです。
それらをどうするのか、いっそのこと墓じまいをしてしまうのか、今後のことも含めてよく話し合っておかないと気持ちよく送り出すことができません。
宗教や宗派を自由に海洋散骨を行うのか、それとも通常のお葬式の形に落ち着くのか、いずれにしてもご家族で時間をかけて話し合ってください。
宗教というのは心の問題ですので、どうすべきなのか正しい答えがないのが難しいところです。
宗教を信じていない人にとってはどのような形でも供養には違いありませんが、宗教儀式を重んじる方にとっては海洋散骨はなかなか受け入れがたいことかもしれません。
しかし大事なのはご家族の皆様が故人を思う気持ちなのではないでしょうか。
どのような供養の方法でも、なるべく故人が希望した通りにしてあげたいものですし、なおかつ、送り出す側も納得できるような方法を皆さんでよく話し合っていただきたいと思います。