◇散骨に関する条例とは?散骨を規制している自治体やルールについて
「散骨って法律違反になるの?」
「地域によっては散骨ができないって本当?」
故人を自然に還すことができることを魅力に感じて散骨という供養方法を選びたいという人が増えていますが、上のような疑問を持っている人は多いです。
そこでここでは「散骨に関する条例を制定している自治体やその罰則」についてご紹介します。
最後に「散骨をする際に注意すべきポイント」もご紹介するので、散骨に興味がある方、散骨について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
Contents
散骨とは、ご遺骨を粉状にして自然(海・山・空)に撒く供養方法で最近注目を集めています。
散骨は古くからある供養方法ですが、まだ日本では数が少ないためその方法やルールはあまり知られていません。
ここから散骨についての法的な位置づけや自治体の条例についてご説明します。
日本で散骨をすることは法律違反になりません。
今のところ散骨に関しての法律が存在しないため、散骨をしたことで法的に罰せられた人もいません。
ただし、散骨の執り行い方が常識の範囲を逸脱していたり、周辺住民の迷惑になったりしていた場合に、法的なトラブルとなることはあります。
散骨をすること自体は法律違反になりませんが、粉骨(ご遺骨を粉状に砕く)しないでご遺骨を撒くと「遺棄罪」で罰せられることがあります。
散骨をする場合は粉骨するのを忘れないようにしましょう。
埋葬とはご遺骨を土の中に埋めることです。
埋葬できる区域(墓地)には許可が必要なので、許可がないところに埋葬すると法律違反となります。
散骨しようと思っていたご遺骨を墓地以外の土地に埋めると法律違反となるため注意が必要です。
2021年3月に厚生労働省より散骨事業者に向けて「散骨に関するガイドライン」が発表されました。
散骨に関するガイドラインが発表されたということは、散骨をすること自体が国に認められたということを意味しています。
ではガイドラインの内容を簡単にご紹介します。
法令の遵守 |
法律・地方自治体の条例・ガイドラインを遵守する |
散骨場所 |
陸上での散骨→特定の区域で行う 海上での散骨→海岸から一定の距離以上離れた海域で行う |
粉骨を行う |
散骨するご遺骨は粉状にしておく |
関係者への配慮 |
散骨を行う際には、地域住民・周辺の土地所有者などの利益や感情を害することの内容に配慮する |
自然環境への配慮 |
散骨をする際に自然環境へ悪影響を与えないようにする |
散骨を利用する人との契約 |
利用者に契約の内容を明らかにし、散骨後に「散骨証明書」を交付するなど |
散骨を行う人の安全確保 |
散骨の参列者の安全に配慮する |
散骨の実施状況の公表 |
散骨の実施状況をホームページ等で公表する |
ガイドラインには上のような内容が掲載されています。
散骨業者を選ぶ際にはガイドラインを遵守している業者であるかどうかを確認しましょう。
散骨をする際に公的な許可・届け出は必要ではありません。
しかし、散骨業者に依頼する場合はご遺骨の身元を明らかにするために「埋葬許可証」の提出を求められることが多いです。
また、一度お墓や納骨堂に納めたご遺骨を取り出して散骨する場合は、「改葬許可証」が必要になることもあります。
散骨をする際に必要な書類については散骨業者に確認しましょう。
日本では散骨に関する条例や要綱・ガイドラインを発表している地域もあります。
条例が制定されるようになった背景には地域住民と散骨業者もしくは個人との間にトラブルが相次いだことがあります。
条例の内容やその対象者(事業者向け・個人向け)は自治体によって違うので、内容をしっかり理解しておくことが大切です。
条例 |
条例違反者に罰則を与えられる |
ガイドライン・要綱 |
違反者に対して法的拘束力や罰則を与えられない |
条例は違反者に対して法的拘束力があり罰則を与えることができますが、ガイドライン・要綱は違反者に対して罰則を与えることができません。
しかし実際には要綱・ガイドラインを破ってその地域で散骨業を行うことは難しいです。
条例と要綱・ガイドラインは似たようなものだと思っておいて良いでしょう。
では、これから散骨に関する条例がある自治体とその罰則についてご紹介します。
日本では散骨に関する法律はありませんが、自治体によって条例やガイドラインが制定されています。
散骨をする際には、その地方で定められているルールに従って行いましょう。
では、散骨に関する条例・ガイドラインを自治体ごとにご紹介します。
自治体 |
内容 |
罰則 |
北海道長沼町 |
・散骨の原則禁止 |
6月以下の懲役又は10万円以下の罰金 |
北海道岩見沢市 |
・散骨の原則禁止 ・散骨場の設置規制 |
6月以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
北海道七飯町 |
・散骨場設置への規制 |
- |
長野県諏訪市 |
・散骨場設置への規制 |
- |
埼玉県秩父市 |
・散骨の原則禁止 ※個人も対象となる |
- |
埼玉県本庄市 |
・散骨場設置への規制 |
- |
宮城県松島町
|
・散骨の原則禁止 ・散骨場の設置規制 |
6月以下の懲役又は10万円以下の罰金 |
静岡県御殿場市 |
・散骨場設置への規制 |
6月以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
静岡県熱海市 |
・散骨場設置への規制 |
- |
静岡県伊東市 |
・散骨場設置への規制 |
- |
静岡県三島市 |
・散骨場設置への規制 |
6月以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
神奈川県湯河原町 |
・散骨場設置への規制 |
- |
神奈川県箱根町 |
・散骨場設置への規制 |
- |
愛媛県愛南町 |
・散骨場設置への規制 |
- |
鹿児島県伊佐市 |
・散骨場設置への規制 |
- |
熊本県南阿蘇村 |
・散骨場設置への規制 |
- |
では各自治体の散骨に関する条例・ガイドライン・要綱について詳しくご紹介します。
【参考】長沼町さわやか環境づくり条例
墓地以外で散骨すること自体を禁止する条例です。
6月以下の懲役又は10万円以下の罰金
自治体内に樹木葬の施設ができ、その施設に対して住民から苦情が上がり条例を制定することになりました。
散骨の原則禁止と散骨場の設置を規制する条例です。
個人で散骨を行う際にも自治体への申請が必要になります。
6月以下の懲役又は100万円以下の罰金
【参考】七飯町の葬法に関する要綱
散骨場の設置を規制する要綱です。
散骨場・墓地・納骨堂・火葬場の設置には近隣住民(設置予定地のから200m以内の全ての住民)からの同意と市長の許可が必要だとする条例です。
【参考】秩父市環境保全条例
散骨を原則として禁止する条例です。
散骨業者だけでなく個人も対象となります。
本庄市内に散骨場を設置するには市長の許可が必要とする条例です。
許可の基準が厳しいため事実上は散骨業が認められないことが多いです。
【参考】松島町環境美化の促進に関する条例
松島町内で散骨場を営業することと町内での散骨を原則禁止する条例です。
6月以下の懲役又は10万円以下の罰金
御殿場市内で散骨場の経営する場合、周辺住民や市長の許可が必要だとする条例です。
6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
【参考】熱海市ガイドライン
熱海市の土地から10㎞以上離れた海上で散骨をすることや散骨事業者はサービスを紹介する文言に「熱海」「初島」などを使用してはいけないということを示した条例です。
伊東市の陸地から11.11㎞以内での海上散骨を禁止することや散骨事業者はサービスを紹介する文言に「伊東市」「伊東市沖」などを使用してはいけないということを示した条例です。
三島市内で散骨場を経営する際には市長の許可が必要だとする条例です。
6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
散骨場を設置する場合に周辺住民・町長の許可が必要だとする条例です。
箱根町内で散骨場を設置する場合には町長の許可が必要だとする条例です。
愛南町内で散骨場を経営する際には町長の許可が必要だとする条例です。
【参考】伊佐市環境保全及び美化推進条例
伊佐市内で散骨をする場合には市長の許可が必要だとする条例です。
【参考】南阿蘇村環境美化条例
阿蘇村内では墓地以外の場所での散骨を禁止するという条例です。
東京都には散骨に関する条例はありませんが、東京都福祉保健局のサイト上に「都内での散骨に関しては各自治体への確認が必要」だと掲載されています。
このように散骨に関する条例や要綱・ガイドラインを発表している自治体はいくつかあります。
ただし、ルールを守って散骨を行うことは違法ではありません。
散骨をする際には事前に自治体の条例やガイドラインを確認してから行いましょう。
散骨業者であれば自治体の条例やガイドラインに詳しいので、トラブルを避けるためにも散骨業者に依頼して散骨を行うことをおすすめします。
海外での散骨に関しての考え方はその国によって違います。
アメリカの場合、州法によってある程度のルールが定められているところもあります。
日本で人気のハワイで海洋散骨をする場合は海岸から一定の距離以上離れたところで行うというルールがあります。
日本には海外で散骨を行いたいという方も多いですが、国によってルールが違うので事前に調べておきましょう。
散骨をする際にはいくつか注意すべきポイントがあります。
散骨を行う前に注意すべき点を確認しておきましょう。
散骨するご遺骨は事前に粉骨しておきましょう。
粉骨していない状態のご遺骨を撒くと法律違反となってしまいます。
散骨業者を通して散骨する場合に粉骨の過程を抜かすことは少ないですが、自分で散骨をする際には粉骨を忘れてしまう可能性があります。
散骨前には粉骨が必須だということを知っておきましょう。
自分が所有する土地で散骨を行うことは違法ではありませんが、散骨をした土地の評価額は下がってしまうので注意しましょう。
後々にその土地を売りたいと思っている場合は、土地の価値が下がってしまうので他の場所で散骨するのをおすすめします。
散骨をする場所に関しては法的な制限はありませんが、ある程度のマナーを守る必要はあります。
例えば、海水浴場・養殖場・観光地など多くの人が利用する場所での散骨はおすすめできません。
散骨場所を誤ると後にトラブルとなることがあるので、散骨場所を選ぶ際には注意が必要です。
散骨業者であれば散骨に関してのマナーにも詳しいので、初めて散骨をするという方は散骨業者に依頼しましょう。
散骨は法律的にOKな供養方法ですがそのやり方を間違うと法的なトラブルになってしまうこともあります。
自治体によっては条例やガイドラインが定められているので地域のルールに従うことも大切です。
散骨後のトラブルを避けるためにも事前に地域の条例について調べておきましょう。
詳しい内容について知りたいという方は散骨のプロである散骨業者に相談するのがおすすめです。
ルールを守って思い出に残る散骨式を行いましょう。
天井 十秋
10年以上に渡り、全国の海域で散骨を行って参りました。
故人様の旅立ち(エンディング)を「より良く、より自分らしく」をモットーに、1,000名様以上もの供養をサポート。
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