◇墓じまいをした後の散骨
墓を管理する人がいない、遠方で墓地御管理ができない、という方が増えてきています。その場合には、「墓じまい」という選択肢があることをご存知ですか?
しかし、墓じまいをするのはいいけれど、墓じまいした後遺骨はどうすれば良いのかわからないとお悩みではありませんか。今回は、墓じまいの方法や手続き、その後の散骨という方法についてご説明します。
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「墓じまい」とは、墓石を取り壊して今の墓地を更地にしてお寺に返すことです。墓地が遠い、継承者がいないなどの理由で墓じまいを希望する人が増えています。
問題は、墓じまいをした後の遺骨の管理の方法です。経済的な理由で墓じまいをしたのであれば、新たに墓地を用意することも難しく、手元で供養する場合もあります。しかし持ち主が亡くなってしまいますと、再び供養の方法を考える必要が出てきます。
そこで今、墓じまい後の散骨という供養の方法が注目されているのです。
散骨とは、墓じまい後に行うこともある、ご遺骨を細かく粉砕して粉状にし、海や山などに撒いて自然に還す供養の方法です。
散骨には大きく分けて、山などの陸地に散骨する方法と、海に散骨する方法があります。宇宙散骨などもありますが、費用がかかりますので墓じまい後は海か山での散骨を選ぶことが多いでしょう。
海洋散骨は海にお骨を蒔く方法です。
という3つが一般的です。
山林散骨とは、お骨を山、森の中で撒く方法です。
という方法が一般的です。
散骨の費用ですが、どの程度関わりを持って行うかによって違ってきます。
一つの家族で行う方法。相場は20~30万円程度です。
何組かの家族と合同で行う方法。船をチャーターするにも複数の家族で費用を割りますので、個別散骨よりも安めです。相場は10~20万円程度です。個別と違うところは、1家族で乗船できる人数が限られてしまうことと、日程が選べないことです。
散骨に関する作業を業者に全て任せる方法です。時間がとれない、現場に行くことができない方はこちらの方法が良いでしょう。相場は3~5万円程度です。
墓じまいには色々と書類の提出が必要ですが、散骨は自由にできます。というのも、散骨という供養の方法は、「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」に定められた埋葬の方法ではないため、散骨自体の許可は必要ないということになります。
ただし、散骨自体が違法でなくとも山に撒くなら所有者の許可が必要ですし、故人が好きだった観光地に撒きたいと思っても、自治体の条例を確認しなくてはなりません。散骨自体が認められていないこともあるからです。また、海に撒く場合も漁場や海水浴場などは避けるべきでしょう。もちろん、お骨をそのまま撒くのではなく、細かく粉末状にすることも必要です。
散骨はマナーを守り、自然環境にも配慮して行うことが大切なので、墓じまいをする前に方法を検討しましょう。
墓じまいをするには、受け入れ先があることを証明し、改葬するという手続きをしなくてはなりません。
墓じまいをするためには、
の3点が必要になります。
まず、埋葬証明書ですが、こちらは墓じまいをしたい寺院で発行してもらうものです。改葬許可申請書と一緒になっている場合もあります。
ところが最近では寺院もやりくりが大変なため、いきなり墓じまいをするというと難色を示されることも。墓じまいが難航するなどのトラブルを避けるためにも「墓じまいをしたい」と早めにお寺に相談しておくことをおすすめいたします。
受入証明書は、移転先の寺院で発行してもらうものです。通常は次の墓地に移すことを前提に墓じまいをしますが、散骨の場合は散骨をする業者に発行してもらうことになります。
埋葬証明書、受入証明書とともに戸籍謄本等の必要書類を添付して、墓じまいをする墓地のある自治体に改葬許可を申請し、改葬許可証を発行してもらいます。
これで、墓じまいの手続きが終わり、実際の作業に入れるようになります。
墓じまいは、墓地を更地に戻すことですから、
が必要です。
改葬許可証が取得できたら、お寺と石材店に連絡をして墓じまいの作業に入ります。
この際に、檀家としてお墓を管理してもらっていた方は、離檀料を支払います。墓じまいの離檀料には明確な規定はありませんので、そのお寺、地域での慣習が元になっていることが多いです。
お寺に支払う墓じまいの費用としては、
で、数万円から数十万円かかります。お寺の格やこれまでの関係性もありますので、墓じまいはいくらと一概には言えないところです。
暮石の撤去自体ももちろん費用がかかります。地域によって違いますが1㎡あたり10万円程度と考えてください。費用についてはあらかじめいくつかの石材店に見積もりを出して比較しておくとよいでしょう。
墓じまい全体の費用としては、数十万円~100万円程度を見込んでおくと良いでしょう。最近ではお墓の調査から手続き、作業まで墓じまいを一括して行ってくれる業者もいます。お墓が遠方で大変な方は、墓じまいを丸ごと頼める業者を探すことも検討してみてください。
お骨をお墓からお出しして墓じまいが終了したら散骨の手続きに入ります。
散骨する際にはお骨を2ミリ以下の細かい粉末にしなくてはなりません。自分で行っても違法ではありませんが、かなり難しいので、専門の業者に依頼して粉骨してもらいましょう。その後、希望する方法で散骨をしてもらいます。
墓じまいと散骨をするとお墓の管理をしなくて良くなるので、物理的、経済的にも楽になります。ただし、実際に墓じまいと散骨をする前によく考えておいてほしいことがあるのです。
墓じまいと散骨をしてしまうと、お墓のようにお参りする場所がなくなります。静かに故人を偲ぶ場所がなくなるということは、心の拠り所がなくなるということなのです。
死に対する考え方は人それぞれです。墓じまいをして暮石という物理的なものがなくても大丈夫、という方もいれば、そうでない場合もあります。墓じまいをした後の故人を偲ぶ方法について考えておいた方が良いでしょう。
心の拠り所を考える上でも、墓じまい後に全て散骨してしまうのか、一部を残しておくか(分骨)ということをよく考えてください。
墓じまいの後は手元で供養したい、お墓を新たに作りたいという親族もいるかもしれません。
トラブルにならないためにも、墓じまいの方法は親族でよく話し合うようにしてください。あとあとのことを考えると、墓じまいの際に分骨しておいた方が良いでしょう。
散骨に立ち会うにしても、お願いするにしても、散骨業者の選び方はとても重要です。やり直しがききませんから、じっくりと納得がいくまで検討して選びましょう。
粉骨は、ただ細かくお骨を砕けば良いわけではありません。専門の機器を使用し適切な方法できちんと粉骨してくれる業者を選びましょう。
料金については、基本料金しか明記されておらず、後からオプション料金が勝手に追加されて請求額が最初に提示された額と違う、ということのないように、明確に説明されているかということがとても大切です。
そして最も大切なのは、粉骨や散骨に対しての姿勢です。遺族にとっては故人を送り出すための大切な儀式。心込めて精一杯のことをしようという気持ちを持って取り組むことが求められます。「料金が安い」「家から近い」といった理由ではなく、直接電話で問い合わせてみるなど、業者選びはしっかり行ってください。